地震倒壊リスクと法的責任について
築古物件オーナーが知っておくべき「地震倒壊リスク」と法的責任
― 民法717条に基づくリスク管理と実務対応 ―
はじめに
築年数の経過した賃貸物件を所有・運用されている皆様にとって、建物の老朽化は避けて通れない課題のひとつです。とくに近年は、南海トラフ巨大地震をはじめとする大規模災害のリスクが高まっており、「倒壊による第三者被害」への備えがより一層求められています。
本記事では、民法第717条に基づく所有者責任の考え方をもとに、過去の判例や実務でのリスク判断、具体的な管理上のチェックリストなどを通じて、築古物件に関する法的リスクとその回避策を丁寧に解説いたします。
民法第717条の概要
【民法第717条】(工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者が損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がこれを賠償しなければならない。
この条文は、建物や塀、看板などの「工作物」に欠陥(設置・保存の瑕疵)がある場合において、まずは使用者(借主等)に、次いで所有者(オーナー)に責任が及ぶことを定めています。
判例から見る所有者責任の実例
阪神・淡路大震災における判例(大阪地裁・2004年)
ある賃貸住宅が地震で倒壊し、入居者が死亡した事案で、建物の老朽化が著しく補強工事もなされていなかったことから、「保存の瑕疵」が認定され、所有者に対して損害賠償責任が認められた判決です。
この判例は、「天災だから責任はない」という一般的なイメージを覆し、老朽化や管理不備があった場合は、所有者に法的責任が生じることを明示した重要な判断です。
責任が問われやすい状況とは
以下に該当する場合、所有者が損害賠償請求を受ける可能性が高まります:
・建物の明らかな老朽化(傾き・ひび割れ・腐食など)を放置していた
・耐震診断や補強工事を怠っていた
・入居者や近隣住民からの指摘を受けていたにも関わらず、対応していなかった
・危険な構造物(外階段・塀・看板等)を是正しなかった
一方で、下記のような対応が取られていれば、責任を免れる(または軽減される)可能性が高まります:
・耐震診断・補強を適切に行い、履歴も保管していた
・管理会社や専門業者による定期点検を継続していた
・契約時・重要事項説明で物件状況を明示していた
おわりに
築古物件の運用においては、「古い=危険」という単純な話ではなく、どのように管理し、どのように情報を開示しているかが責任判断の分かれ目になります。
所有者としての責任を果たすためにも、まずは現状を正しく把握し、必要な対応を一つひとつ着実に行っていくことが求められます。
このコラムが、今後の賃貸経営・資産保全の一助となれば幸いです。
とAIがまとめてくれたコラムとなります。
下記、チェックリストもご準備しました。築古物件をお持ちのオーナー様、一度確認してみてはいかがでしょうか。
チェックリスト:自己点検のための管理状況確認
• ■ 建物の構造・老朽化に関する項目
□ 1981年以前に建築された(旧耐震基準)
□ 外壁・屋根・基礎にひび割れ・傾き・腐食がある
□ 手すり・階段・バルコニーにサビ・劣化がある
□ 過去10年以内に耐震診断を受けていない
• ■ 共用部・設備の安全性に関する項目
□ 看板・照明・アンテナ等が固定されていない
□ 塀や門柱にぐらつき・亀裂がある
□ 共用部に転倒・感電リスクがある箇所がある
□ 雨漏り・水漏れ・カビが発生している
• ■ 管理・契約面に関する項目
□ 点検・修繕履歴を残していない
□ 借主に建物の状況を告知していない
□ 苦情・指摘に対応した記録がない
□ 保険(施設賠償責任保険等)に未加入
• ■ 災害時対応の整備状況
□ 避難経路や防災案内を整備していない
□ 火災・漏水等のマニュアルがない
□ 契約書に免責条項・責任分担の明記がない
判定の目安:判定状況
リスク評価
チェック数の大半が「はい」: 良好(管理体制は比較的万全)
「いいえ」が3〜5個程度 : 注意(対策の見直しが必要)
「いいえ」が6個以上 : 危険(法的責任を問われるリスク大)